モザイクは法律の条文ではない|刑法175条と、日本AVがぼかす本当の理由
「日本だけモザイクなのは法律で決まっている」——半分合っていて、半分は違う。刑法175条(わいせつ物頒布等)はぼかしのピクセル数を指定していない。条文が禁じているのは、わいせつな電磁的記録を不特定多数へ頒布・公然陳列すること。業界と捜査の側が「性器の形状が分からなければ摘発しない」という運用を積み重ねた結果が、今のモザイクです。この記事は無修正の行き方ではない。なぜFANZAはぼかし、なぜ海外は違うのかを、条文と運用の差で置きます。確認日: 2026年8月14日。
先に「できないこと」/書かないこと
- 無修正専門サイトの名前・行き方・回避手段は書かない
- モザイクを外すツール、薄い修正の作り方は書かない
- 「見るだけで逮捕」とも「絶対に捕まらない」とも書かない。個別事件は構成次第
条文が言っていること
刑法175条1項は、わいせつな文書・図画・電磁的記録などを頒布し、または公然と陳列した者を、2年以下の懲役または250万円以下の罰金などと定めている。電気通信で送る場合も同じ。モザイク、ぼかし、解像度の数字は条文に無い。
何が「わいせつ」かは判例の抽象的な基準(いたずらに性欲を興奮・刺激し、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する)に委ねられる。1990年代以降の摘発実務では、性器が露骨に描写されているかがおおよその線になった、というのが標準的な整理です(Wikipedia「わいせつ物頒布等の罪」ほか)。
参議院には、モザイクを施せば175条を免れるのか、と政府見解を問う質問主意書が出ている。政府が「このピクセルなら無罪」と答えたわけではない。業界が自主審査団体(日本コンテンツ審査センター等)の基準で修正している、というのが現場です。
見る側と配る側は、罰の向きが違う
通説では、わいせつ物頒布は片面的対向犯とされる。配る・陳列する側を罰し、相手方となる購入や閲覧そのものは罰しない、という整理です。だから「FANZAで修正済みを買う」と「無修正をネットに置く」は、同じ欲望でも法律上の席が違う。
| 行為 | 175条の見え方(通説・運用) |
|---|---|
| 国内の正規店で、修正済みを自分で見る・買う | 頒布の相手方。罰の本体ではない、とされる |
| 自分で撮ったものを、自分の端末に置く | 頒布・公然陳列ではない(別の罪——同意・年齢——は別問題) |
| 無修正を不特定多数が開ける場所に置く、販売する | 頒布・陳列の本体。摘発の中心 |
| 薄い修正・数フレームの漏れ | 「一部わいせつは全部わいせつ」で作品全体が対象になり得る、という実務解説がある |
FC2で自分撮影の無修正を売って起訴された事件では、「モザイクが無いだけでわいせつはおかしい」と争う主張が出た(弁護士ドットコム2022)。裁判所が「モザイクが無い=即違法」と機械的に決めているわけではないが、国内サーバで無修正を売る行為が摘発対象になっていることは、この一件だけでも分かる。
海外が無修正なのは、175条が無いから
商業AVに局部修正を必須にする運用は、日本にかなり偏っている。多くの国は成人の合意ある性表現を、わいせつ物頒布の枠では縛らない。だから海外正規プラットフォームにモザイクが無い作品がある。それは「日本人がVPNを通せば合法になる」という意味ではない。
- 日本の175条が掛かるのは、日本の構成要件に当たる頒布・陳列
- 海外の正規店で成人が自分のアカウントで見る行為と、日本向けに無修正を再配布する行為は別
- 当サイトは後者の案内をしない。無料サイトの値段で書いたとおり、残り物の無修正集積はマルウェアと著作権の両方で高い
買う側が実際に使う結論
- FANZAや国内同人のぼかしは、販売者側が摘発を避けるための自主規制。購入者が「法律で強制されている画質」を選んでいるわけではない
- ぼかしが気に入らないからといって、無修正の再配布側へ行くのは、175条の配る側に近づく
- 自分で購入した修正済みファイルを、自分で見る範囲に留める——これが今の運用と一番距離が短い
- 実在の他人の顔を加工して無修正化する話は、175条以前に非同意・ディープフェイクの罪へ落ちる
よくある質問
Q. モザイク付きなら絶対セーフ?
原則として摘発対象になりにくい、が実務の見え方です。透過が強い・漏れがある、となると別。販売者側の審査の話であり、買う側がピクセルを測る必要は無い。
Q. ダウンロードして自分のPCに置くのは頒布?
自分のための複製と、不特定多数への提供は別です。再アップ・グループへの共有は頒布側へ寄る。自分の本棚は、買ったファイルを外に出さない前提です。
Q. 海外正規店の無修正を日本で見ると捕まる?
成人の閲覧そのものを175条で罰した、という通説的な整理は薄い。配った側・置いた側が本体。だからといって、再配布サイトを正当化しない。
参照: 刑法175条、参議院質問主意書(モザイクとわいせつ物)、弁護士ドットコム(FC2無修正販売事件)、Wikipedia「わいせつ物頒布等の罪」(片面的対向犯・摘発基準)。法律の個別適用は事案次第。これは捜査マニュアルではない。関連: 非同意画像とディープフェイク / FANZAの買い方